グラフィックデザイナー タキ加奈子 & 柴田ユウスケ
プレイフルな毎日を作り出す、完璧なデザインのイスと子ども達の笑い声。
デザインスタジオ「soda design」を主宰し、グラフィックデザイナーとして数多くのエディトリアルや広告を手掛けるタキ加奈子さんと柴田ユウスケさんご夫婦。私生活では現在、8歳の男の子と4歳の女の子の子育て真っ最中です。2年ほど前、気鋭の若手建築家に設計を依頼した新居へと引っ越しをし、家族の暮らしは大きく変わったようです。カラーパレットのような美しい色に満ちた邸宅と、その鮮やかさに引けを取らない賑やかな子ども達。ふたつのトリップトラップをかこむ、プレイフルな日常にお邪魔しました。
本当に遊び心にあふれたお家です。設計士さんがインスピレーション源としたものはあったのですか。
(柴田さん)建築家の山田紗子さんの自邸を雑誌で拝見して、デザイナーっぽい感覚や発想の仕方にすごく共感したんです。制約をアイディアに変えるような軽やかさにすごく惹かれて、自宅にも彼女のアイディアを取り入れられたらと思ってお願いしました。
(タキさん)以前は賃貸マンションに住んでいたので、家の中を子どものために変えたりすることは正直ちょっと難しかったんです。新しい家を建てるときは、普段もっとこうだったらいいのになって思っていたことを全部詰め込みたいというのはありました。リクエストの一つは、子どもが小さいうちはなるべく一緒にべったり過ごしたいということ。そして子ども達が大きくなった時に、プライベートな空間を足せるような家が理想でした。もう一つは、自分たちがグラフィックデザインの仕事を手がける中でカラフルなものやポップなものが好きだったので、ちょっと人と違うことをしてみたいという思いがあり、色や遊び心がどこかにあったらと話しました。「例えば、窓枠の一部に色がついているとか……」って、ぽろっと言った夫の言葉を実現してくださったのを知った時は、感動しました。
(タキさん)私たちが当時暮らしていた家に設計士さんがいらした時、トリップトラップがふたつあったんです。設計士さんにも小さなお子さんがいらっしゃって椅子の存在を知っていらしたから、「すごいカラフルですね!」ってすごく注目されて。それなら、このトリップトラップが似合うようなカラフルな家にしてみたらどうかと、提案があったんです。
(柴田さん)当時はヴィンテージマンションだったので、茶色っぽいシックな空間にかなりポップな色のトリップトラップが置いてあって、大人の空間に急に子どものものが入ってきたような、正直ちょっと違和感がありました。でもこの家に暮らすようになってから、それがまったく気にならなくなったどころか、なくてはならない存在感に。大人になると、暮らす空間も徐々にシックになっていくけれど、鮮やかなトリップトラップが馴染むようなカラフルな家の方が、ずっと自分たちらしいと感じるようになりました。
トリップトラップがインスピレーション源になった家とは驚きですね。暮らしてみて、その理由を感じることはありますか?
(柴田さん)色だけじゃなくて、この家の空間を作る階段や柱は水平垂直なものが多いので、空間のラインと椅子の造形美とがマッチしているなと思います。家の中に子どものものがあるっていう感じがまったくしないですし、家具を足す時もトリップトラップを軸に、あえてまた色のある椅子を選んでみるようになりました。
(タキさん)友達が遊びに来るたびに、この家のために子どもの椅子を買ったの?ってよく聞かれます。この椅子から家ができたんだよって話すと、また驚かれますね。インテリアには、ヴィンテージ感のある籐の棚や植物柄のカーテンなど、設計事務所が最初に用意をしてくれました。空間に色柄がある分、椅子やテーブルはちょっと落ち着いたものを選んだ方がいいのかなっていう感覚もあったんですが、不思議とカラフルさが違和感なく、全てが見事に調和しているんです。木造で内装にも木を使っていることと、木の家具だから互いに馴染んでいるというのもきっとあると思います。
木の心地良さというのも、トリップトラップとこの家との共通部分ですね。
(柴田さん)内装の木の壁材にはところどころ色を塗っています。トリップトラップも同じですけれど、カラフルな色でありながら木目のテクスチャーがうっすら感じられるのが、すごく好きな部分です。僕たちはデザインの仕事をしているので、作ったものの行く末みたいなものを時々考えることがあります。土に還るっていくとか、燃やしたとき極力地球に負荷がかからないとか。そういうことを考えていくと、素材として木であることというのは、絶対にいいという確信が持てますよね。
――マスカットとぶどう。鮮やかなトリップトラップはなくてはならない存在――
ふたつのトリップトラップはどのように手に入れたのですか? この色を選んだ理由はありますか?
(タキさん)息子のために最初に選んだのが、黄緑色のトリップトラップでした。元々緑色が好きでソファもフロアマットも緑。自分の好きな色というのがあったけれど、このトリップトラップは蛍光色っぽくかなり明るめの黄緑色。他では見たことない綺麗な色だったので、迷わずこれ! と、選んだ記憶があります。もうひとつは、緑の反対色であり補色である紫を選びました。息子に「妹にはどの色がいい?」と聞いたら、「自分の椅子がマスカットだから、ぶどう色がいい!」って言ったのを良く覚えています。どちらも珍しい色だからこそ、愛着も強いです。
お子様たちは、トリップトラップをどのように使っていますか。
(タキさん)新生児の時からニューボーンセットを取り付けて使っていたので、生まれたときから触れているイスだから、自分たちの居場所みたいになっています。二人目が生まれた時も、すぐに兄妹が並んで食卓を囲めたのでそれもすごく良かったです。今は、しっかりと机に向き合ってというよりは、二人とも本当に自由な形で使っています。特に小学校に行き始めた息子は、学校では姿勢を正す機会が増えたのでいつもピシッとしているから、家ではすごくリラックスして座っているようで、見ていてそこがすごくいいなって思います。子ども達の友達が来たときも、トリップトラップはみんな座りたがる場所。愛着がありすぎて、自分の椅子に座られると喧嘩になってしまうときもあるくらいです(笑)。
機能的な面で、トリップトラップを選んで良かったと思うことは?
(タキさん)見た目の可愛さは第一ですが、子どもたちが自分で登って自分で降りて、というのを結構早い時期から自然にやっていて。その光景は日常生活の一部になっています。この家に引っ越してきてから来客がすごく増えたんですが、イスが足りなくなった時に、大人も自然に座れることもすごく良くて、トリップトラップならではだなと思っています。
――真似したいけど真似できない、本物のデザインは時代を越えるんです――
デザイナーという立場から、トリップトラップを見てどう思いますか。
(タキさん)我が家は大空間に3つもある階段が全部スケルトンなので、玄関からリビングの窓までを見渡すことができるんです。トリップトラップも同じような印象で、横から見た時に余計な面積がないので、視界の邪魔をしないので空間に自然に馴染んでいます。それでいて個性もあって、すごくいいデザインバランスだなって実感しています。
(柴田さん)究極に削ぎ落とされた構造ですよね。学生時代にお世話になった先生の言葉を今でも覚えているんですが、生徒が先生に「いいデザインって何ですか?」って質問したとき、先生は自分には到底真似できないような憧れのデザインではなくて、「くそー!自分もやれたのに!」って思うようなものこそ、一番いいデザインなのだと教えてくれました。トリップトラップのデザインは、まさにそれだと思うんです。設計の緻密さがありながら、造形は一見誰でも考えられそうなシンプルさで成立しているのは、先生の言葉にすごく近いと感じました。50年以上もデザインを変えていないことも、本物だということが伝わりますよね。真似したいけど、真似できないものというのは、これからもずっといいデザインなんだと思います。
この家での家族の暮らしは今、完璧なカタチを描いているように見えます。将来に向けて、変化していくことを思い描いていますか。
(柴田さん)この家には階段が3つあるんですが、うち2つは今は天窓につながっていて行き止まりです。子ども達が自分の空間を持ちたいとなった時に、部屋を増築した時のためのものです。家族の形も暮らし方もきっと徐々に変わっていくと思うので、この家の作りやトリップトラップと同じように、僕たち家族も変形しながら、今この瞬間に不満を持たないような生き方だけはしたいなと思っています。
(タキさん)自分たちのライフスタイルに合わせて変化していく家、というコンセプトでこの家は提案していただきました。変形していくっていう発想って家具に対してはなかったのですが、トリップトラップは高さを調整して大人まで変形させながら使えるものです。家族も家も、一緒に成長していく感じがあってすごく共感できます。
子どもたちとの素敵な時間をインスタでシェアしてくださっていますが、瀧さんが子どもたちとの時間を大切にしたいと思う瞬間は、どんな時ですか?
(タキさん)圧倒的に、笑っている時間が増えました。元々私は心配性な性格だし、すぐにネガティブに考えるし、仕事でもすぐ落ち込むタイプ……。ですけれど、子どもといるとそんなふうに落ち込んでいる時間や隙なんてなくなるんですよね。すぐ目の前で、元気の塊みたいなのが動き回って生きていて、私自身にも考えることがいっぱい生まれて、総じて自分も元気になったなっていうのはあります。きっと、子ども達に助けられていますね。家族の気配を常に感じられる壁のない家だからというのも、そうさせているのかもしれませんね。
取材・文:須賀美季
写真:髙田久美子
Text:Miki Suka
Photos: Kumiko Takada
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人間工学を基にデザインされており、成長にあわせて調節できるので、子どもから大人まで常に正しい姿勢をサポートします。