インテリアアーキテクト トッサーニ糸田敦子

毎日愛でていたい、機能美を持ち合わせたアートのようなイス。

建築設計事務所「リカルド・トッサーニ・アーキテクチャー」で、インテリアデザインを担当するトッサーニ糸田敦子さん。ランドスケープ全体を考えるダイナミックな建築と、機能美を追求したインテリアは独自のハーモニーを生み出しています。私生活では、3つ子の男の子のママとして奮闘中の糸田さん。夫婦で作り上げた美しいデザインの自邸には、3つの木のハイチェアが美しく並びます。そのうちの一つは、飴色になったアンティークのトリップ トラップ。ママとしてデザイナーとして感じている、イスへのこだわりを伺いました。 

空間づくりやインテリアデザインを手がける上で、特に大切にされていることはどんなことですか。 

 

私たちの設計事務所は東京と北海道にオフィスがあるのですが、特に北海道で手がける物件は開発から携わることが多いので、地域や文化、環境なども含めて、広い視野を持って取り組んでいます。子育てもそうですが、建築もインテリアも一過性のものではないので、ずっと先を考えることが重要だと感じています。 

そのような中でも、受け継ぐという考え方は特に大切にしています。私は秋田の出身で、夫はトスカーナ出身の両親を持つイタリア人。どちらにも、家族で使ってきたものを大切に受け継ぐという共通した文化があって、私は竹細工などの民芸品などを、夫は戦前から使われてきたワインオープナーなどを今も大切に使っています。 

旦那さんが設計された自邸で、子どもたちの家具やおもちゃを加えていくとき何をポイントに選んでいきましたか。 

 

まず、なるべくプラスチックではなく天然素材のものがいいよね、というのはありました。その中で、もともと大切に持っていたものと共存してもおかしくないものを、自然と探していたと思います。より手作りに近いものを求めていくとやはり木製のものが多くなりますし、ネジなどの小さな部品一つとっても製品にかけたアイデアや職人の時間を感じられるものを選んでいると思います。 

 

また、デザイナーが明確であるかということもすごく大事にしています。デザインした人の背景を知れば、その時代や理念から、作り手の想いを感じられるからです。我が家にあるトリップ トラップも、50年前にノルウェー人のデザイナーが自分の子のために手がけたという明確なフィロソフィーがあることが、決め手になりました。そういった背景を知ると、なるべく長く持っていたいという大事にする心にもつながりますよね。 

 

三つ子のママになられて私生活も激変したと思いますが、苦労されたこと、逆に良かったと思えることはどんなことですか。 

 

子ども達は、今年9歳になりました。3人とも小さく生まれたのですが、今は元気に学校に行っています。それぞれ性格が違うのがとても面白いですね。妊娠から出産までは本当に壮絶な体験で、退院するまでにも時間がかかったので、退院してからは毎日がお祝いのようでした。些細で当たり前のことができるようになることが、こんなにも素晴らしいことなのかと。子供が成長する中で、インクルーシブ教育について学べたことも、本当に良かったことだと思っています。いろんな子どもたちが生きている世の中で、日本はまだまだインクルーシブの考え方が低いのが実情です。私自身もデザイナーとして、インクルーシブの考え方に寄り添うものを作って行きたいと考えるようになりました。 

――子どものイスを通して感じた、インクルーシブデザイン―― 

 

子どもたちのために3人違った木のハイチェアを用意されましたが、そのうちの一つであるトリップ トラップについて、使用してみてどう感じましたか。 

 

トリップ トラップは一番安定性がいいと感じました。使用してから気がついたのですが、実はインクルーシブの観点で見てもすごく良い製品でした。座るところが固定されている子どものイスと違って、体が大きくなってもその子の大きさに応じて座面・足のせ板の高さと奥行きが調整ができますし、息子のように体幹が弱くても、きちんと両足をつけて体を支えて食事をすることができることが素晴らしいと思いました。 

 

アンティークのトリップ トラップは、どこで出会ったのですか。 

 

東京の中古家具店でたまたま見つけたのですが、飴色になった木の表情が素晴らしく美しいと見惚れてしまいました。デザイン業界ではトリップ トラップは名作として知られているので、迷わず購入しました。我が家では、高さが調整できるアッキーレ・カスティリオーニのダイニングテーブルを使っていたので、デザインされた時代背景も近くコンセプトもしっかりしているのできっとマッチすると確信しました。また、同じ時期にデザインされているストッケ社のノミ(旧シッティ)も、中古家具店で購入しています。 

――コンセプトのあるイスは、所有することのできるアートピース―― 

 

建築デザインの仕事する糸田さんにとって、イスはどのような存在ですか。 

 

私は、イスはアートだと思っています。アートピースが家の中にあって、なおかつそれが機能的であること。機能美を持つ芸術品ですね。私のモダニズムのデザイン信念とマッチするイスに出会うと、その存在だけで私の生活が豊かになるので、トリップ トラップのような名作と言われるコンセプトのしっかりしたイスを常に持っていたいなって思っています。 

トリップ トラップは、日本の住宅にも似合うと思いますか。 

 

木製のトリップ トラップは、近代的な日本の住宅にも、伝統的な日本家屋にもすごく合うと思います。木を組んでいくというデザインが、日本の木造建築と共通するように感じています。座面のスライドは、まるで木造建築の仕口(しぐち)のようですから。 

 

インテリアデザイナーとして、トリップ トラップをどのように見ていますか。 


私は、天然素材のイスをよく使用しますが、トリップ トラップのように木のイスの一番大事なところは表面温度だと思っています。特に、私たちのように北から南まで様々な環境で仕事をするとよくわかるのですが、金属やプラスチックのイスは触れると冷たかったり熱かったりするのですが、木は温度に影響されないのが強みです。小さな子どもが使う時に、それはすごく大事なことですよね。さらに、汚れや傷がついても木ならば気にならず、むしろ味になるというのも良い点です。 

 

トリップ トラップは、大人になるまでずっと使えるイス。デザイナーが自分の子どものために作ったことを考えると、構造として第一に安定性を考えたのだと思います。子どもがずっと安全に座れるように、というデザイナーの想いを強く感じられるイスでもありますね。小さな金具もすごく素敵ですし、本当に名作ですよね。 

 

取材・文:須賀美季

写真:髙田久美子

Text:Miki Suka

Photos: Kumiko Takada

 

子どもとともに成長する椅子 – 人生をともにする椅子​


トリップ トラップは、1972年の発売と共に瞬く間に子ども用チェアに画期的な新風を吹き込んだ、ピーター・オブスヴィックデザインの独創的なチェアです。

あらゆるご家庭のテーブルにもぴったりフィットするデザイン。赤ちゃんと共にテーブルを囲んで食事が楽しめ、赤ちゃんは家族のすぐそばでさまざまなことを学びながら成長することができます。

座板と足のせ板のどちらも、奥行きと高さを調節できる考え抜かれたデザインです。また、お子さまの活発な動きを妨げません。

人間工学を基にデザインされており、成長にあわせて調節できるので、子どもから大人まで常に正しい姿勢をサポートします。​